下町酒場はしご酒~江戸川のディープな居酒屋巡り
創業60年以上の老舗酒場
JR総武線新小岩駅からタクシーで約10分、同潤会通りを曲がった路地裏に街の猥雑から身を隠すように佇む一軒のバラック風の木造家屋。
知らなければ通り過ぎてしまうような佇まいに、ここが酒場であることを見極めるには、木戸の向こうに響く歓声を手がかりにするか、もしくは酒飲みの勘に頼るしか手立てはない。
どこか秘密めいたその情景に、酒飲みなら誰しも、名酒場が放つ特別なオーラを感じずにはいられないはずだ。
ここ(中村屋)は、毎夜常連客で賑わう典型的な下町酒場であり、地元になくてはならない存在として親しまれてきた名店だ。
常連客の指定席ともいえるデコラのカウンターは使い込まれ、積み重ねてきた歴史の長さを物語る。
天井には裸蛍光灯がぺたっとつき、見るからにノスタルジックだ。
メニューは「たこさしみ」「ネギマかつ」「いかげそからあげ」など、昔ながらの酒肴が用意される。
カウンターに肩を並べる飲み客はノスタルジックな酒場空間に満足げだ。
1日の仕事を終えたお疲れ、仲間との気楽な語らい、久しぶりの友と会った一杯、なんとなく主人の顔を見に行くひとり酒。
まことに居酒屋ほど心休む場所はない。
それが古い店であれば、居心地はさらに深まる。
ながく続いているのは、安価でうまい肴があり、いつも変わらぬ良心的な商売を続けきたからだ。
その居心地をつくるのは、創業からの店構えや内装だ。
ロンドンのパブ、フランスのカフェ、ドイツのビアホール、イタリアのバール、アメリカのスナックバー。
世界の町には、何かと顔を出して一息つくための酒場がある。
日本では居酒屋だ。
それは町の人の心を安定させるための欠かせない装置になっている。
ここ(中村屋)は下町大衆酒場遺産のひとつ。
文化遺産、自然遺産、産業遺産などの「遺産」とは、今その価値を保護しないと消滅する危惧のあるものを言う。
ながい歴史を経てできたものは再現できなく、それゆえに価値がある。
居酒屋遺産の条件は、創業が古く昔のままの建物であること。
代々変わらずに居酒屋を続けていること。
老舗であっても庶民の店を守っていることだ。
↑マグロぶつ切り850円はボリューム満点
↑人気のエビフライもこのボリューム
↑甘味が強いほうれん草の胡麻和え
↑創業当時の建物のまま営業を続けていることに価値がある
店名 | 中村屋 |
住所 | 東京都江戸川区中央2-27-10 1階 |
営業時間 | 17:00~22:00 |
定休日 | 火曜 |
連絡先 | 03-3655-7711 |
関連サイト | なし |
取材日 | 2022年 |
◆この記事を書いたひと
酒場ライター:居酒屋伝道師・池波和彦
東京生まれ東京育ち。酒場巡りを趣味とし、北は北海道の離島から南は沖縄の離島まで新規7000軒以上の店を巡りブログ「日本の酒場をゆく」を執筆。毎夜全国の居酒屋やバーにて神出鬼没の酒戦の日々を過ごす痛飲派。
ブログ「日本の酒場をゆく」↓
※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。
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